一、「相模」と「あしがら」― 箱根から大磯へ
「こゆるぎのいそ」は古代の相模の国府が置かれた旧余綾(よろぎ)郡の海浜であり、現在の大磯から小田原にあたります。 「こよろぎ」「こよるぎ」「こゆるぎ」などの表記がありますが、玉藻や千鳥を景物に多くの詠歌が生まれています。
こよろぎのいそたちならし磯菜摘む
めざし濡らすな沖に居れ浪
(古今和歌集 巻二十 1094 よみびとしらず)
【意味】
こよろぎの磯を走りまわって、磯の海藻を摘んでいる前髪のかわいい乙女を濡らすな、波よ。沖に居なさい。
中世の紀行文『海道記(かいどうき)』(作者未詳)では、「あはれさびしき空かな、眺め馴やて人は行らんな。(箱根の山を越えたあとに広がる大磯の景色に感動したが、他の人は慣れてしまっているからもう感動しないのか)」と述べています。
大磯や小磯の浦の浦風に
行ともしらずかへる袖かな
(海道記 作者未詳)
【意味】
大磯や小磯の浦を吹く風に、私が旅を行くとも知らず翻って後に帰ろうとする衣の袖よ。
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