2019年12月31日に中国の武漢から最初に報告された新型コロナウイルス感染症が全世界的な広がりをみせ、我々の日々の生活をはじめ、医療、観光、スポーツ、経済など、さまざまな分野に大きな影響を与えています。世界保健機関(WHO)は13日、新型コロナウイルスの致死率は2009年にパンデミック(世界的な大流行)を起こしたH1N1型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の10倍に相当すると指摘し、感染拡大を完全に止めるためにはワクチンが必要だとの見解を示しています。日本においても、感染者数は1万人を超え、200名を超える死者も出ており(4/21現在)、また病院における集団感染も発生するなど「医療崩壊」が懸念される事態となっています。新型コロナウイルスをはじめ、感染症は、過去にも人類の脅威となり、歴史にさまざまな影響を与えてきました。感染症は、完全に防ぐことは出来ませんが、対策は可能です。今回は、感染症の歴史や、危機管理についての資料を紹介します。
図書のとびら
『インフルエンザ・ハンター ウイルスの秘密解明への100年』
ロバート・ウェブスター 著 岩波書店 2019
請求記号:493.87/65 (23048986)公開
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症であり、世界中すべての人が影響を受けます。新しいインフルエンザウイルスが出現すれば、瞬く間に世界中に広がり、パンデミックを引き起こすでしょう。インフルエンザ・パンデミックで最も深刻な事態を引き起こしたパンデミックは、1世紀前に起こったスペインかぜインフルエンザです。このようなパンデミックは、また起こりうるのでしょうか。本書は、世界的なインフルエンザ研究者、ロバート・ゴードン・ウェブスター博士の著書"Flu Hunter:Unlocking the secret of a virus''―副題「インフルエンザウイルスの秘密の扉を開ける」の翻訳です。
『感染症と私たちの歴史・これから』
飯島渉 著 清水書院 2018 請求記号:493.8 /182(23032485)公開
19世紀後半から20世紀後半の約100年間、多くの学者や技術者が感染症のメカニズムの発見や治療薬の開発、予防のための対策に尽力してきました。数万年におよぶ感染症と人類の攻防は、感染症の原因が明らかになった前後で二つの時期にわけることができます。そして、新興感染症や再興感染症は、人類が感染症を完全に制圧することは困難であることを教えてくれました。私たちが健康に生きていく上で、感染症とどのように共生していくのか、考えるきっかけを与えてくれる一冊です。
『現代危機管理論 現代の危機の諸相と対策』
公共政策調査会 編 立花書房 2017 請求記号:369.3 /585(22947972) 公開
現在日本で使われている「危機管理」という言葉は、自然災害や大規模な事件事故など幅広い危機を対象とし、危機対応だけでなく、予防や再発防止などを含めたトータルな管理として一般的にとらえられています。危機管理の対象となる事象は、国家、自治体、企業や団体、家庭、個人などのレベルや主体によって異なります。本書では、第1部で危機管理総論を述べ、第2~4部で国家から個人まで異なる主体の危機管理について、それぞれ対象となる事象ごとに述べられています。また、第2部7章では、実際にあったパンデミックを分析し、最悪のパンデミックが発生した際の現代日本で起こりうる具体的なシナリオ(フィクション)を提起しています。
『SARS いかに世界的流行を止められたか』
WHO西太平洋地域事務局 著 結核予防会 2007
請求記号:493.87ss/49 (22169106) 公開
SARSは、2002年11月から2003年7月までの間に29の国と地域に8096症例と774死亡例を出した世界を震撼させた感染症です。医療や公衆衛生が進んだ現代においても、感染症の脅威は過去のものではなく、新興再興感染症は現実の脅威として迫っています。多くの人々が航空機を利用する状況の中、一定の地域で発生した感染症もあっという間に世界中に広まることをSARSは実証しました。本書は、SARSの主戦場となった中国、アジア諸国を所管するWHO西太平洋地域事務局で指揮を執っていた尾身茂事務局長を中心にまとめられた記録であり、今後、発生が懸念される新興再興感染症の発生に備えて、事前対応策の構築、迅速な情報収集と分析・対応、国家連携の推進などを提言しています。
『感染症の世界史 人類と病気の果てしない戦い』
石弘之 著 洋泉社 20
請求記号:493.8 /180 (22783096)公開
感染症が人類の脅威となってきたのは、農業や牧畜の発明によって定住化し、過密な集落が発達し、人同士あるいは人と家畜が密接に暮らすようになってからと言われています。インフルエンザ、SARS、結核などの流行もこの過密社会抜きには語れません。また、鶏や豚、牛の食肉の大量生産の始まりやペットブームにより動物の病気が人に移る機会が増えました。このため、本来人と接触がなかった感染力の強い新興感染症が次々に出現しています。さらに、交通機関の発達で病原体は時を置かずに遠距離を運ばれるようになったことも感染症拡大の要因の一つです。 14世紀のペストや20世紀初期のスペインかぜをはじめ、感染症は人類の歴史に大きく関わってきました。その絡み合った歴史を身近な感染症を選んで、環境史の立場から論じています。
雑誌のとびら
「ウイルスが変えた社会 コロナ・エフェクト 芽吹く新秩序」
『日経ビジネス』日経BP社 第2037号 2020年4月13日号 p.24-41
請求記号:Z3305/59
新型コロナウイルスとの戦いは厳しい局面が続いており、終わりはまだ見えていません。未知の感染症との戦いは、既存の秩序や方法論の見直しを迫ってきます。本記事では、ビジネスの最前線にいる人たちは、すでに新型コロナウイルスが社会に及ぼす変化「コロナ・エフェクト」を見定めようと動き始めています。コロナ・エフェクトで、テレワークの広がりに伴うオフィスの見直しを早急に検討する必要性を訴えています。
「コロナ恐慌」
『週刊エコノミスト』毎日新聞出版 通巻4644号 2020年3月31日号
第1部 p.14-37 第2部 p.68-79
請求記号:Z3305/5
新型コロナウイルスによる肺炎が猛威を振るって世界中に拡散しています。目に見えない敵に世界は大混乱となっています。第1部では、このまま対策がなされなければ資金繰り倒産が続出するとして、世界経済への影響をさまざまな側面から総点検しています。第2部では、市場、自動車産業、エレクトロニクス産業などコロナ・ショックが各産業に及ぼす影響を検証しています。
新聞のとびら
「県内に緊急事態宣言 新型コロナ来月6日まで7都府県 スーパー、公共交通は維持」
神奈川新聞 2020年4月8日 p.1
安倍晋三首相は7日、新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく政府対策本部の会合を官邸で開き、緊急事態を宣言した。対象地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県で、期間は5月6日まで。東京都は休業要請する対象施設の公表を先送りし、10日に発表して11日の開始を目指すとした。
「全国小中高に休校要請 首相、来月2日から 新型コロナ」
日経新聞 2020年2月28日 p.1
安倍晋三首相は27日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明した。3月2日から春休みの期間で実施を求めた。実際に休校するかは学校や地方自治体の判断となる。子どもを持つ保護者は働き方の見直しを迫られる。首相は休暇取得などへの環境整備に協力するよう各企業に呼びかけた。 補足:県教育委員会は4月2日、休校延長を要請。
インターネットのとびら
World Health Organization
https://www.who.int/
WHO(世界保健機関)のサイトです(英文)。2019年12月31日に中国の武漢から最初に報告されたコロナウイルス感染症の最新情報や対策方法をはじめ、さまざまなウイルスに関する情報や、研究報告、健康に関するニュースやアドバイスなどが掲載されています。
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/
2020年1月より明らかとなった中国武漢市をはじめとする肺炎およびその原因とされる新型コロナウイルスに関連する疫学、検査等について情報やインフルエンザの流行マップなどの感染症トピックスや、公開講座・イベント情報、研究トピックスなどを掲載しています。