2020年度から、これまでの大学入試センター試験が廃止され、「大学入学共通テスト」が始まります。大学入試制度の見直しは、従来のセンター試験が始まった1990年以来の30年ぶり。2020年度の導入は見送りとなりましたが、新テストでは、大学教育に必要な基礎知識・技能を確認するとともに、思考力・判断力・表現力を重視した選抜を行うため、国語と数学に記述式問題の導入が予定されています。また、英語については、英語の4技能を総合的に評価することを目的に、国が認定した民間の資格・検定試験の結果を活用する方向性が示されています。
さらに、小学校や高校では、新たな教科の導入や、既存の教科の名称変更などが行われます。大学入試改革と一体となって始動する新教育課程が育成しようとする新学力とは何か、これからの社会に求められる能力とはなにか。今回は、大学入試改革を始めとする教育改革や、今後の教育の課題や方向性などについての資料を紹介していきます。
図書のとびら
『大学入試改革 ―海外と日本の現場から―』
読売新聞教育部 中央公論新社 2016
請求記号:376.8/159(22906259) 公開
大学入試は、受験生やその親だけに関わるテーマではありません。入試の存在感が大きい日本では、高校までの教育や企業の人材育成等にもかかわる問題です。少子化が進む中、未来の大人をどのように育てたいのか、家庭環境に左右されず、どの子も自分の力を存分に伸ばせるような教育をどう実現させていくべきなのか。国内外で進む改革の流れを紹介するとともに、「大学入試の可能性」を社会全体の問題として捉え、論じています。
『日本社会の変動と教育政策』
小川正人 著 左右社 2019 請求記号:373.1/262(23096274) 公開
日本社会は、これまで社会変動に起因した抜本的な教育改革を明治維新期、敗戦後の戦後改革期として経験しています。その後、日本の社会・産業の変化に呼応して学校制度の部分的見直しを行ってきましたが、1990年代から今日まで続く「教育構造改革」は、これまでと異なり、学校制度の「深部」に迫る改革です。 新学力、子どもの貧困・教育費、学校の働き方改革という三つのテーマを切り口として、今後の教育政策を考えていきます。
『英語教育の危機』
鳥飼玖美子 著 筑摩書房 2018 請求記号:375.89/34(22987085) 公開
2020年度から「大学入試共通テスト」が始まります。英語試験はコミュニケーション能力を重視するという趣旨のもと、「読む聞く」「書く話す」の4技能を測定する方式に転換し、英検やTOEFLなどの民間検定試験を導入する予定です。さらに、新学習指導要領は2020年度から小、中、高校と順次施行される予定で、少なくとも10年にわたって日本の英語教育を拘束すると考えられます。本書では、これまでの「グローバル人材育成」を目指した英語教育改革を振り返ったうえで、新学習指導要領における英語教育の内容を検討しています。また、多様化していく世界への対応を可能とする英語教育のあり方を探っています。
雑誌のとびら
「視界不良の大学入試改革 2本柱撤回でも残る懸念」
『週刊東洋経済』 東洋経済新報社 6900号 2020年1月18日号 p20-21
請求記号:Z330.5/2
1990年から始まった大学入試センター試験が今年で幕を閉じ、2021年からは「大学入学共通テスト」が始まります。次年度以降、導入予定だった英語の民間試験活用と記述問題の導入が見送りとなりました。しかし、共通テストがセンター試験に逆戻りするわけではありません。中長期的方針は、文科省が昨年末に新たに設置した「大学入試のあり方に関する検討会議」で方向性を決めることになります。具体的には英語の4技能の評価方法と記述式問題のあり方、経済状況や居住地域などに関わらず受験できるような方策について検討が行われる予定となっています。
「特集 国語の大論争 「論理国語」と大学入試」
『中央公論』中央公論新社 第133巻第12号 通巻第1633号 2019年12月号
p.30-79 請求記号:Z051/4
新しい学習指導要領による高校「国語」の科目再編が話題になっています。選択科目に「論理国語」「文学国語」が新設され、その結果、文学に触れる機会が減るのではないかと懸念されています。そもそも、「国語」はどうあるべきなのか?特集では、国語教育のこれからと、今後問われていく能力について言及しています。
「提言「歴史的思考力を育てる大学入試のあり方について」の意義」 鈴木茂
『学術の動向 日本学術協力財団 第24巻11号 通巻284 号 2019年11月号 p.57-60 請求記号:Z061/501
日本の大学入学者の選抜方法は、長い間、教科ごとに「一発勝負」の学力試験が行われてきました。歴史系科目は用語の暗記力を問う傾向が強く、ある意味ではこのような選抜方法に相応しいものでした。しかし、グローバル化で社会の急速な変化に直面する今、自ら問題を発見し、解決する資質・能力が求められています。本記事では、本来、大学入学者の選抜には、高校におけるあるべき歴史教育の成果を十分反映できるような形式を導入することがふさわしい、と提言されています。
「最前線 中学受験が大学入試改革を先取り」
『AERA』 朝日新聞出版 第33巻5号 通巻1781号 2020年1月27日号 p.16-17
請求記号:Z051/203
英語の民間試験に続き、国語、数学の記述も延期となった大学入学共通テストですが、モデル問題が中高一貫校で実施されている「適性検査」に似ていると話題となりました。適性検査は、知識ではなく、思考力、読解力を重視した内容となっていて、扱う題材の難易度は違いますが、答えを導き出す過程は大学入学共通テストと似ています。一方、逆に、適性検査の共同作成問題が今年は大きく変化し、共通テストのモデル問題に似てきたとの声も上がっています。多様な入試が登場する中学の入試改革は大学よりも一歩先を進んでいます。今後、教育自体が変化する中、大学入試のあり方も変化が求められています。
新聞のとびら
「記述式も見送り「ご理解を」」
朝日新聞 2019年12月17日夕刊 p1
萩生田光一文部科学相は17日、2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される国語と数学の記述式問題について、「導入の見送りを判断した」と記者会見で表明した。採点ミスの懸念や自己採点の難しさなどが解決できず、「受験生の不安を払拭し、安心して受験できる態勢を早急に整えることは現時点においては困難」と説明した。(中略)共通テスト自体は、現在の高校2年生が受験する2021年1月から現行の大学入試センター試験に代わり始まる。(後略)
「社説 入試改革、失敗の本質を探れ」
日本経済新聞 朝刊 2020年1月21日朝刊 p2
今年で最後となる大学入試センター試験が終わった。来年は大学入学共通テストに衣替えするが、導入する予定だった英語民間試験と国語などの記述式は土壇場で見送られ、教育現場は混乱した。その反省を踏まえ、新たな入試制度を再設計する文部科学省の検討会議の議論が始まった。何が間違っていたのか。非公開だった政策の決定過程を明らかにし、徹底した検証を求めたい。(後略)
インターネットのとびら
独立行政法人 大学入試センター
https://www.dnc.ac.jp/
大学入試センターの公式サイトです。大学入試共通テストに関する最新のお知らせや、平成29年、30年に行われた試行調査の結果、導入に向けた検討状況、今後の実施方針などが掲載されています。
文部科学省 令和3年度からの大学入試
https://www.mext.go.jp/nyushi/
文部科学省が、2021年度からの大学入試についての情報を提供するサイトです。入試での各大学の英語の資格・検定試験活用状況や、大学入試についての情報が順次掲載されます。