公開

原三溪は号であり、本名原富太郎。旧姓は青木といい横浜の実業家、原善三郎の孫娘の婿として原家に入りました。2018年が生誕150年、2019年が没後80年の周年となります。
三溪は横浜で先代善三郎から生糸貿易や製糸業を引継いだ実業家であり、関東大震災からの横浜の復興に奔走した功労者でありますが、美術品の蒐集や若い画家達の援助などにも力を注ぎ、造園した三溪園を早くから市民に公開するなど、文化を支援する立場からも数多くの業績を残しました。三溪園は「西の桂離宮、東の三溪園」と言われるほどの評価を得ています。また、三溪は自らも書画の筆を取り、いくつもの作品を残しています。
7月13日(土曜日)からは横浜美術館で「生誕150年・没後80年記念 原三溪の美術 伝説の大コレクション」展も開催されます。今回は横浜に大きな足跡を残した原三溪の生涯を、文化人としての業績を中心に資料を紹介します。

かながわ資料のとびら

紹介資料表紙 『原三溪 偉大な茶人の知られざる真相(すがた)』
齋藤清 著 淡交社 2014 請求記号:ハラ K28.1/592 常置(60641842) かながわ資料室公開

著者は神奈川出身の古美術商。2006年に『原三溪今村甚吉宛書簡集』(請求記号:ハラK28.1/548 かながわ資料室公開)を出版しています。
本書では、関係者が語る人物像の他に美術品購入の覚書や茶会記、本人の手による書画作品から見えてくる三溪の文化人としての姿を描いています。
口絵には三溪旧蔵の美術品や三溪の筆による書画のカラー写真が掲載されています。また巻末には「原家略系図」、「三溪略年表」、「三溪に関わる人物紹介」がまとめられています。

紹介資料表紙 『三溪園の建築と原三溪』
西和夫著 有隣堂(有隣新書) 2012 請求記号:K62.13/21 常置(60604584) かながわ資料室公開

横浜市中区本牧三之谷にある三溪園は、元は三溪の養祖父原善三郎が土地を入手し、別荘として松風閣を建てていました。善三郎の没後、家財を引き継いだ三溪は自邸となる鶴翔閣を建てて居住します。同時に各地から古建築を移築し、三溪園を造っていきます。
三溪は美術と同じく建築物に高い見識と愛情を持っていました。本書はまず序章で園内を巡ると出会う建築物を順路に沿って紹介し、各章で個々の建築物についての歴史や特色を述べています。建築物を語ることで、三溪の美に対する考え方をも炙りだしています。巻末に関連年表があります。

紹介資料表紙 『原三溪(マンガで見る日本まん真ん中おもしろ人物史シリーズ6)』
渡辺浩行(漫画家) 構成・作画 岐阜県 2004 請求記号:K28.1/624 常置(81090920) かながわ資料室公開

「マンガ立県」を掲げる岐阜県が、郷土の偉人を題材に、「マンガで見る日本真ん中おもしろ人物史シリーズ」の6巻目に岐阜県出身の「原三溪」を取り上げました。 巻末の「原三溪を語る」には当時の梶原岐阜県知事も寄稿しています。
本書は青木富太郎時代の生い立ちから上京、原家との出会いから婿入りを経て、実業家としての実績を上げるまでや、三溪と美術品、若い画家達、三溪園との関わりをマンガで描いています。関東大震災後の横浜復興に尽力した三溪の晩年までをたどる作品です。

紹介資料表紙 『三溪集』
原三溪 著 朝比奈宗源 編 西郷健雄 1951 請求記号:K94.13/1 常置 (50384460) かながわ資料室書庫

原三溪の残した詩歌の遺稿集。十三回忌の節目に三溪の長女西郷春子の依頼を受けて、円覚寺の朝比奈宗源が編集しました。五言絶句ほか漢詩が135首、和歌20首、小唄1に跋文1章を収録しています。
三溪が関東大震災からの復興の思いをこめて作った「濱自慢」には、「乙丑正月復興小唄を作る」との記述があり、この「濱自慢<横濱小唄>」はCD『横浜うた物語』(請求記号:CD44/ヨコハ 音楽・映像コーナー公開)に収録されています。

紹介資料表紙 『原三溪翁伝』
藤本実也 著 三溪園保勝会 編 横浜市芸術文化振興財団 編 思文閣出版 2009 請求記号:289.1/5239(22371744) 県立公開,ハラ K28.1/565 (60552411)常置 かながわ資料室公開 他にも所蔵あり。

本書は藤本實也の手書き原稿による「稿本原三溪翁伝」を半世紀以上を経て活字化、刊行したもので、藤本實也については解題に詳しく述べられています。また、刊行の経緯についても巻末に触れられています。
第一篇「事業と生涯」、関東大震災からの復興と三溪園や日本美術の振興などの文化助成までを取り上げた第二篇「公共貢献」、美術品の愛玩蒐集などを取り上げた第三篇「性格と趣味」で構成されています。
実業家として、横浜の財界の中心人物としての数々の記録のほかに、茶会記など三溪と同時代の人々の記述などから趣味人として名を馳せた生涯が浮き彫りになっています。 巻末に原三溪年譜、人名索引があります。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 「原三溪に学ぶ公共貢献物語」
『マイウェイ』はまぎん産業文化振興財団 No.77 2011年1月号 請求記号:ZC/1624,図書としても所蔵あり 602.13/106(81478935)県立公開 ほか

特別記念号として、原三溪の業績を「公共貢献」という視点から編集しています。本業の蚕糸業の他、関東大震災復興や文化面での社会貢献などを取り上げています。
三溪が初代頭取を務めた横浜興信銀行は、のちに行名変更して、本誌を刊行するはまぎん産業文化振興財団の設立母体である横浜銀行となりました。横浜興信銀行については、第2章に記述があります。

紹介資料表紙 「横浜の巨星 原三溪翁略伝」
『神奈川文化』神奈川県立図書館 5巻4号 1959年7月号 p2~p5 請求記号:ZC/777,図書としても所蔵あり K097/1/5 常置 (50338813) かながわ資料室書庫 ほか

「原富太郎翁物故20年記念 三溪遺墨展」を1959年7月4日から13日の期間に当館で開催したのにあわせて、その略伝をまとめています。
前半は生い立ち、原家への婿入り、事業の継承、生糸輸出や製糸業の拡大、人造絹糸の研究などについて原家を中心とした事業について概略を述べています。後半は美術関係の業績の紹介と遺墨展で展示予定の作品を掲載しています。

新聞のとびら

「原三溪 文化のパトロン (上)、(中)、(下)」
日本経済新聞 (上)2018年3月11日 p16,(中)同3月18日 p20,(下)同3月25日 p16

「美の粋」欄で3回に渡って、美術愛好家としても知られた原三溪を取り上げています。、古美術や古建築を集める一方で新進画家の支援にも取り組んだ三溪の足跡をカラー図版を添えて解説しています。各回のタイトルは、「(上)日本画の創造支えた商人」、「(中)確かな目利き のぞく自信」、「(下)古建築集め理想の庭園作る」、です。

インターネットのとびら

原三溪市民研究会 三溪を学び、三溪に学ぶ
http://www.harasankei-kenkyukai.com/
原三溪市民研究会は藤本實也の稿本『原三溪翁伝』の刊行を目指して2007年9月に発足しました。会では原三溪に関わる調査・研究を行い、ときには三溪ゆかりの場所を実地見学して理解を深め、知識や情報の普及啓蒙に努めています。
ホームページでは原三溪の人物紹介、『原三溪翁伝』の完成までの経緯や著者の紹介、会の活動記録などが掲載されています。
『原三溪市民研究会会報』も当館で所蔵しています。(請求記号:ZC/1474 かながわ資料室書庫)

三溪園ホームページ
http://sankeien.or.jp/index.html
原三溪によって、1906年(明治39)5月1日に開園された三溪園のホームページ。園内の三溪記念館では、三溪園の創設者・原三溪に関する資料、三溪自筆の書画、 ゆかりの作家作品や美術工芸品、臨春閣の障壁画などを展示しています。
また、ホームページ内では原三溪の略歴も公開しています。