現在の元号である「平成」は、来年5月1日より新しい元号となります。元号とは、年号ともいい、年につける呼び名です。中国の漢の武帝の時代に使用されるようになり、その後日本に伝わりました。古くは、天皇の即位に限らず、瑞祥の出現や災害があった際にも改元がなされていました。「明治」以降、一世一元制となり、天皇の在位期間の間に改元は行われなくなりました。日本の元号は「大化」から「平成」までを数えると、247となります。そのほかに、(247ある公年号とは別に)一部でしか使われていなかった私年号もあります。
元号は身近なものですが、その成立の所以や経緯などから、当時の時代が垣間見えます。6月は元号法の成立・公布(1979年)があった月です。遥か遠い時代まで元号の歴史を遡ってみてはいかがでしょうか。その一助になるような資料をご紹介します。
図書のとびら
『日本年號大観』
森本角蔵著 目黒書店 1933 請求記号:210.02/32 (10327351)書庫 常置
日本の年号研究に関する大著です。第一編序説では年号の起源から改元について解説をしています。第二編本論では年号に関わった人物、典拠、文字、時代を明らかにしています。第三編には序説と本論の基となる「日本年號要覧」や和同以降の改元の詔書(約100書)など12種類の資料が収められています。第四編には文献一覧が載っています。著者は東京高等師範学校教授で、本書の特色は第三編の資料にあると凡例で述べています。
『年号の歴史 元号制度の史的研究 増補版』
所 功 著 雄山閣 出版 1989 請求記号:210.02X /407A(20099586)書庫
著者の年号に関する論文(「中国と日本の年号」、「大宝以前の公年号」など)を加筆訂正、編集し、まとめた一冊です。本書は10章と増補2篇(「日本史上の天皇と元号」と「元号「平成」の誕生と意義」)から成り、年号の歴史や年号についてのさまざまな考察が載っています。第7章の「年号研究と群書類従」では、年号研究のための史料について取り上げています。巻末には「年号の読み方一覧」が付いています。
『日本私年号の研究』
久保常晴著 吉川弘文館 1967 請求記号: 210.02/64 (10327757) 書庫
私年号とは、公年号に対して、民衆の間で発生した非公年号のことを指します。非公年号には創作されたものや公年号の同音異字が使われているものなどがあります。著者は、私年号を五つに分類し、全体の総称として「異年号」を用いています。そして、中国での年号の発生から、日本での私年号使用の背景、年代、意味についての分析を時代に沿って詳述しています。
『元号事典 改訂新版』(東京美術選書16)
川口謙二/ 池田政弘著 東京美術 1989 請求記号:210.02/ 211A (20143798) 調査・相談カウンター 公開 常置
冒頭に元号の使用期間や使用する漢字の選択に関する概略があり、元号に関する昭和時代の世論調査と是・否論の意見が提示されています。そして、「大化」から「平成」までの元号ごとに、読み方・天皇名・改元理由・時代の様相などを挙げています。新版で「私年号」の項目が新しく設けられ、本書改訂新版では「平成」の記述が加わっています。
『元号事典』(1977年発行、請求記号:210.02J/211(10330207)県立書庫)は貸出できます。
『歴代天皇・年号事典』
米田雄介著 吉川弘文館 2003 請求記号:288.41/43 (21667001)調査・相談カウンター 公開 常置
『国史大辞典』の天皇・天皇陵・年号(元号)に関する事項を編集・再録し、読みがなを追記した事典です。巻頭で、天皇という号の使用開始から、年号、陵についての歴史的な解説が載っています。そして、各天皇に関する親族関係や事績等の記述と在位期間の元号が時代順に記載されています。
『国史大辞典』は調査・相談カウンターとかながわ資料室で閲覧できます。
雑誌のとびら
「特集 年号と朝廷」
『歴博』 国立歴史民俗博物館 第208号 2018年5月号 請求記号:Z381/20
国立歴史民俗博物館所蔵の資料を研究した、公募型共同研究「広橋家旧蔵文書を中心とする年号勘文資料の整理と研究」の成果報告をまとめた特集です。所蔵資料を基に、年号を決める議論(難陳)や年号を作る会議(改元定)、年号に使われた漢籍などについて書かれています。「中国の測字術と年号の予言」(石立善著)というコラムも載っています。
「特集 日本の年号」
『歴史読本』 新人物往来社 第53巻第1号 通巻第823号 2008年1月号 請求記号:Z210/508
年号の基礎知識や未解決論点、関係資料などがまとめられています。その中には、漢字四文字を使用した元号に関する記事の「四字年号の採用とその経緯」(松尾光著、p148-p151)や、元号を冠した寺院・神社・企業の名を紹介している「年号を冠する寺号・社号・屋号の由来」(田中聡著、p138-p147)などの記事もあります。また、年号が刻まれた木簡や道具、古碑などのカラー写真や諳誦歌等の資料も掲載されています。
<随想> 「改元考」 淺井潤子著
『郷土神奈川』 神奈川県立 文化資料館 第24号 1989年3月 p1-p5 請求記号:ZC884
当時の新聞報道から元号が平成に決まるまでの経緯と江戸時代の改元(享保から元文へ)の経緯について綴られています。著者は改暦を例に挙げながら、元号と西暦の使用について、「西暦表示は勿論必要であるが、歴史的過去を知ることもまた大切であり、現在のところは西暦と元号を両用することが一番望ましい」(p5)と語っています。
新聞のとびら
「新しき年號 慶応改元の回顧」
東京朝日新聞 1912年8月1日 p3
「改元に付き某博士は記者に語りて曰く「大正の語は書經易經等經書中極めて有觸れたる文字にして??諸書に散見する所なるが就中「大公至正」と熟したるあり大に正しく公平にして私なきの意、(中略)詔書を拜すれば『七月三十日以後をあらためて大正元年と爲す』とあり(後略)僞」
「本日より改元して『昭和』元年と稱す けふ詔書公布さる」
東京朝日新聞 1926年12月26日夕刊 p1
「(前略)政府では新御用邸において閣議を開き元號に関し協議の結果『昭和』とすることに決しこの旨上奏した(中略)本會議では午前十一に至り原案通り異議なく決定即日左の如く詔書を公布された(中略)新元號の出典 元號『昭和』の意義は書經の堯典の中に『百姓昭明萬邦協和』とあり世界平和、君民一致を意味するものといはれて居る」
「「平成」あすから」
朝日新聞 1989年1月7日夕刊 p1
「政府は七日、新天皇が即位されたのに伴って臨時閣議を開き、元号法に基づいて新元号を「平成」と決めた。出典は中国の古典「史記」と「書経」。施行は八日午前零時からで、新しい元号名とともに政令で決定、公布した。(後略)」
「社説 残り1年の平成時代 元号の持つ意味を考える」
毎日新聞 2018年5月1日朝刊 p5
「きょうをもって平成は残り1年となった。来年5月1日に新天皇が即位し、新元号に切り替わる。(中略)日本の国際化とともに、西暦と元号の併用はいっそう進んだ。年の途中で元号が変わったことによる年数計算の不便さも影響し、西暦を使う人は増えた。それでも長年続いてきた文化として元号が社会に根付いているのは事実だ。「昭和」や「平成」の区分によって、国民は時代へのイメージを共有することができる。(中略)過去の経緯を踏まえつつ、元号、西暦とどう向き合っていくか。それは新しい時代のありようとも深くかかわる。」
インターネットのとびら
公文書に見る日本の歩み
http://www.archives.go.jp/ayumi/index.html
国立公文書館のホームページ。トップページの「公文書に見る日本の歩み」をクリックすると表示されます。1867年から1972年までの年表があり、西暦または現在から遡って何年前かで検索すると、当時の日本の歴史を見ることができます。各年の出来事が公文書の画像とともに解説されています。元号が明治から大正、昭和に変わったときの改元の詔書発布時の閣議書(元号建定ノ詔書案)の画像もあります。