慶應義塾大学やコロンビア大学で学び、慶應義塾大学総合政策学部教授をしている教育経済学の専門家である著者が、「その教育、本当に効果があるのか?」ということをデータに基づいて分析している本です。「教育」に関しては、とかく感情論や道徳的なことが先行しがちですが、それをきちんとエビデンスに基づいて述べているところが面白いです。
本書では、「子どもを"ご褒美"で釣ってはいけないのか?」、「"勉強"はそんなに大切なのか?」、「"いい先生"とはどんな先生なのか?」など、誰もが気になる疑問に答えています。
よく「子どもは、褒めて育てましょう」と言いますが、成績が悪かった学生には、「よく頑張ったわね」と努力した内容をほめたほうが、「悪い成績を取ったのは(能力の問題ではなく)努力が足りないせいだ」と考え、粘り強く問題を解こうと挑戦し続けるそうです。
そして、「教育にはいつ投資すべきか」ですが、経済学においては、「将来子どもが高い収入を得るだろうと期待して、今子どもの教育支出する」のは、「将来値上がりすると期待して株を買う」のと同じ行為と考えるそうです。1992年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のベッカー教授は、これを「人的資本論」という考え方だと言っています。
さらに、2000年にノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授は、もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前と述べているということで、高校や大学に一番お金をかけるべきだと考えられている常識を覆すような研究も紹介されています。ヘックマン教授は、さらに学力テストでは計測できない非認知能力を人から学び、獲得することが、人生の成功において極めて重要であることを強調しています。
子育て中、もしくはしていた方々には賛否ある部分もあると思いますが、それを家族や友達と話すのも楽しいかもしれません。
『「学力」の経済学』 中室牧子著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015年
資料番号:22828487 請求記号:371.3/217 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:ウルトラの母)
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