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講演の様子神奈川県立図書館本館は、戦後としては珍しい音楽堂を備えた施設として、1954(昭和29)年に建てられました。設計を担当したのは戦後モダニズム建築の旗手・前川國男氏です。
11月22日(日曜日)、神奈川県立図書館にて開催した「図書館建築講座」は、講師に前川建築設計事務所の橋本功所長をお招きしました。橋本所長は、今日まで多くの前川建築の保存・継承・リニューアルを手掛けてこられた方です。講座は、橋本所長による講演と、図書館・音楽堂建設時の映像上映の2部構成で、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じて開催しました。

講演は、前川建築がなぜ「近代建築」ではなく「モダニズム建築」と呼ばれるのかなど、モダニズム建築に少しでも興味を持った方であれば抱くだろう疑問にお答えいただくようなお話から始まりました。前川建築の作品群については、充実した資料とともにその変遷が紹介され、前川氏の発言を紐解くことで、建築にどのような思いが託されているのかを学ぶことができました。講演の最後には、紅葉ケ丘周辺の前川建築と県立図書館・音楽堂の歴史や建築について説明がありました。普段、県立図書館をご利用いただいている方はもちろん、初めてご来館された方も紅葉ケ丘の建築の歴史に思いを馳せることができたのではないでしょうか。

休憩を挟んで行われた質疑応答では、「前川氏が絶賛した建物、橋本所長が絶賛したい建物は?」「耐震補強とデザイン・機能の兼ね合いはどのようにしていますか?」など、参加者の皆様の多数の質問に、具体例を交えてお答えいただきました。アンケートではこの質疑応答がとても良かったとの感想も多く、橋本所長の建築への熱い思いが垣間見られたひとときでした。

講座の後半は、県立図書館が所蔵している「神奈川県立図書館・音楽堂」建設時の記録映像を橋本所長に解説していただきながら上映しました。現代では珍しい工法や、66年前の建設現場の様子を説明付きの映像で見る機会はなかなかありません。専門家ならではの解説を聴きながら、昔の映像を眺めるのはとても面白く、現在と過去を行き来しているような、不思議な感覚でした。

歴史ある建物を見直す動きが活発な今、「使われてこそ意味がある」という橋本所長の言葉には重みがあります。資料を探す合間に建築を楽しみに、ぜひ神奈川県立図書館へご来館ください。
また、ご来館が難しい方はホームページに神奈川県立図書館本館写真集をご用意しておりますので、ご覧になってみてください。

◯リンク先
神奈川県立図書館本館写真集

(県立図書館:「図書館建築講座」担当)