『私の英国史』というと何やらエッセイ的な感じがしますが、さにあらず。英国の歴代国王について書かれた、バリバリ本格派の評伝です。こう書くとさも難しそうですが、自分の気になる時代・国王の所だけ拾い読みできるので、意外と気軽に読める感じになっております。
ちなみに収録範囲はノルマン朝のウィリアム1世征服王からスチュアート朝のチャールズ2世まで。ですので七年戦争以後の栄光と苦難のドタバタヒストリー(※)がお好みの方にはやや物足りないかもしれません。 私も最初、「この頃は敵がフランスくらしかいないし、つまんなそうだなぁ」などと思っていましたが、どっこい外敵が少ない分、そのエネルギーが国内に向けられるため、身内(フランス含む)の権力争いが大混戦。読んでいてとても面白いです。
ただし問題が一つ。英国王、同じ名前が多すぎて、そういう意味でも大混戦。ウィリアム1世・2世→ヘンリー1世・2世→リチャード1世→ジョン→ヘンリー3世→エドワード1世・2世・3世→リチャード2世→ヘンリー4世・5世・6世→エドワード4世→リチャード3世→ヘンリー7世・8世...。 もうジョン王が愛しく思えます。実際には「Lackland(無領地王)」とあだ名されるような、あまりよろしくない王様なんですが...。
さて名前はともかく、数いる英国王の中では、ヘンリー7世が私のお気に入りです。シェイクスピアの『リチャード3世』で知られているように、薔薇戦争を制し、絶対王政の基礎を築いたすごい王様なんですが、いかんせん息子(ヘンリー8世)と孫娘(エリザベス1世)がド派手すぎて影に隠れがちに...。
でもそんな不憫なところも好きです。
色々語りたいことはありますが、とにかくぜひ読んでみていただきたいです。 英国はいま、BREXITの影響で王国が分裂するのしないの大変な騒ぎですが、そんな今だからこそ、大ブリテン島の王の系譜を振り返ってみてはいかがでしょうか。
ん?チャールズ2世までだから、スコットランド合併前じゃないかって? そういえばそうですね。
でも面白いので読んでみてください。以上!
(※)七年戦争(しちねんせんそう)とは、1756年から63年に、プロイセンとオーストリアとの間で起こった戦争のことです。イギリスがプロイセン側、フランス・ロシアがオーストリア側で参戦(といってもイギリスは資金援助のみ)しましたが、同時期に英仏は海外植民地(北米・インド)でも争っていました。この戦いでイギリスはフランスを破り、大植民地帝国の基礎を固めました。しかしその後立て続けにアメリカ独立戦争、ナポレオン戦争、米英戦争が勃発したり、一方では産業革命が始まったりと、激動の時代に突入しました。
『私の英国史』福田恆存著 中央公論社 1980年
資料番号10485431 請求記号233L/16 OPAC検索
(県立図書館:好きな英国メーカーはデイジーのアレ)