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今は昔、ドイツ旅行でサンスーシ宮殿を訪れた時のこと。 ガイドさんが案内してくれた先には、宮殿の主・フリードリヒ2世のお墓がありました。
フリードリヒ2世といえば、啓蒙専制君主、天才戦略家、プロイセンを列強に押し上げた偉大なる「大王」...。
受験生時代に詰め込んだそんな知識が、ぼんやりと思い出されました。 そうか、これが大王のお墓...。
フリードリヒ2世のお墓にジャガイモが乗っている様子.jpg

...というか、なんだこのジャガイモ...

訝しげに「芋の巣...?」と呟く私に、ガイドさんはドヤ顔で仰いました。
「ドイツにジャガイモを広めたのが大王だからです!」

ジャガイモ(とくに揚げたもの)をこよなく愛する私は、「帰ったらこの人の伝記を読もう」と、固く心に誓ったのでした。

本の表紙画像(『フリードリヒ大王』 飯塚信雄著).jpgさて、フリードリヒ2世は非常に有名な王様なので、たいていのヨーロッパ史にはお顔を出されますが、意外と単独の伝記は少ないようです。ですから今回ご紹介する本は、大王を知りたい方には、非常にありがたい存在かもしれません。

この本はとくに大王の人となりについて書かれた本なのですが、正直に申しますと、大王、かなり面倒くさい上にイヤミな性格をしておいでです。もともと勝手に英雄然としたイメージを持っていたせいもあるのでしょうが、そんな感想を抱いてしまいました。ただ、だから幻滅したか、と言われれば、けっしてそんなことはありません。

本書のはしがきには、「いかにも人間らしい弱点を必要以上にたくさん持った愛すべき男」と書いてありますが、本当にそのとおりで、「伝説の大王」の意外な人間臭さに、むしろ魅力を感じました。虚弱で独善的で、女嫌い。晩年には人間不信で友達はグレイハウンド(犬)だけ。しかしそんな姿が、従来の偉大な君主像と不思議と違和感なくミックスされ、新たな大王像が私の心に刻まれたのでした。

最後に、私が一番感銘を受けた大王の名言をご紹介します。 本書では非常に高尚な訳でしたので、他の本から引用させていただきます。横紙破りですが、何卒ご容赦ください。

「わたしが国王として統治するこのプロイセン王国では、誰であろうと、自分自身のライフスタイルと世界観に従って生き、それによって精神の至福を獲得する権利が保障されている。」
(『50のドラマで知るヨーロッパの歴史』 マンフレート・マイ著 小杉尅次訳 ミネルヴァ書房 2010年 資料番号:22399844 請求記号:230/156 OPAC検索)

『フリードリヒ大王』 飯塚信雄著 中央公論社 1993年
資料番号20638151 請求記号234.05CC/107 OPAC検索

(県立図書館:好きな芋料理はフリッツ)