公開

本の表紙画像(『よみがえる金次郎』漆原智良文 山中桃子絵).jpg「正門の横に薪を背負って本を読んでいる少年の像があるのを知っていますか?」これが私の通う小学校に途中で赴任してきた校長先生の第一声でした。
約600人の児童がざわつきだした全校朝礼、何人かの児童が大声で「金次郎」と答えると校長先生は続けて、「そうです、二宮金次郎です。では皆さん、金次郎は右足と左足のどちらが前に出ていますか?」と質問されます。もう児童たちは朝礼そっちのけで周りと話しだしてしまい混乱しましたが、校長先生は「何気なく日々を過ごすのではなく、何事にも注意を払って生活しなさい」とおっしゃり朝礼台を降りられました。
もうン十年も前の出来事なのに昨日の事のように心に残っています。

昔は多くの小学校にあり子供たちが親しんだ金次郎像ですが、最近は設置されていなかったり、あっても座って本を読んでいたり、薪を背負わず横に置いていたりする像も見られるそうです。ですから、今は薪を背負った少年と言われても金次郎とわからなかったり、そもそも金次郎を知らないお子さんも多いかもしれません。
また、二宮金次郎(二宮尊徳)を知っていても、貧しい農家の出ながら必死に勉強し身を粉にして働いて、晩年は幕府に召し抱えられた苦労人で、尊敬するけど近寄り難い人、その教えも堅苦しくて難しそうだとちょっと敬遠していませんか?

この本は、金次郎の偉業を現代の出来事に置き換えて親しみやすくした物語と、金次郎像の変遷の歴史がつづられています。
「金次郎像がなぜ広まったのか?」「なのにどうして減ってしまったのか?」そして「どうして姿が変わってきたのか?」気になりませんか?「座る」「祈る」「大人の姿」と形を変えた現在の金次郎像の写真も掲載され、小さなお子さんから年配の方まで楽しめます。

神奈川県立図書館には、二宮金次郎(尊徳)の本やその教えである報徳思想の資料がたくさんあります。この本をきっかけに神奈川の偉人二宮金次郎に興味を持ち、いろいろな本を手に取っていただけると幸いです。

『よみがえる金次郎』 漆原智良文 山中桃子絵 こどもくらぶ編 同友館 2011年
資料番号:60595501 請求記号:K157/663/3 OPAC検索

(県立図書館:母校の像は右足でした)