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本の表紙画像(『死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男』安達正勝著)タイトルだけで思わずピリッと神経が張り詰めてしまいそうな本ですが、「死刑執行人」と聞くと、どのようなイメージを抱かれるでしょうか?冷酷な精神の持ち主、人間らしさが欠如している人物...そのような想像をしがちです。果たして実際はどうなのでしょうか?

フランス革命を扱った作品といえば、映画や小説、漫画など、さまざまなジャンルに渡って、優れた作品が世界中に存在しています。一風変わったこの本は、フランス革命で裁かれた国王ルイ16世の死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンという人物にスポットを当て、彼の目から見たフランス革命はどのようなものであったかを描き出しています。
フランスの死刑執行人は社会的には激しい差別の対象だったと書かれていますが、これは執行人が世襲制であった事、また当時の死刑の中にはかなり残酷なものもあった事などが関連しています。サンソンという人物は非常に思慮深く、また真面目に職務をこなしていましたが、同時にかなりの差別を強いられながら生活していたようです。

国王ルイ16世に関しては、一般的に愚鈍なイメージがついて回りますが、この本では少々捉え方が違っている点が目を引きます。彼は当時の拷問制度を廃止にし、さらに残酷な処刑法を減らしました。その意向に賛同したサンソンはルイ16世を慕っていましたが、巨大な革命の波に押され、最終的に死罪となった王の首にギロチンを落とす運命を背負わされます。死刑制度とは一体何なのか、死刑執行人とは一体何なのか...。冷酷非道に見える執行人ですが、感情を持った人間であることに変わりはありません。彼が、国王処刑にあたり苦悩や葛藤をする姿がドラマチックに描かれます。

この本を読めば、あなたの中の「死刑執行人」像が大きく変わることでしょう。それは、非人間の烙印を押され続けた上、極限の立場に置かれた人の心を知る事と同じだと思います。

『死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男』 安達正勝著 集英社 2003年
資料番号:22974505 請求番号:289.3/2271 OPAC検索

(県立図書館:りんご)