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本の表紙画像(『シネマ100年技術物語』石弘敬編著)本書は、「映画生誕100年」に当たる1995年に発行された、日本の映画機械発展史です。映画機械の歴史書としてもとても勉強になりますが、「一般の映画愛好家の方にも興味をもって読んでいただける読み物」として書かれています。

1895年(明治28年)、フランスのルミエール兄弟が「シネマトグラフ」という映写機を使用し、布製のスクリーンに映写をして見せたことにより「映画」が誕生しました。その2年後、映写機が日本に上陸。翌年の1898年(明治31年)には、日本にも映画機械工業が誕生します。本書には、明治から平成6年(1994年)までの、映画機械の技術開発とそれにまつわるエピソード、各時代の映画に沸き立つ人々の様子が、軽快な文章で書かれており、とても楽しく読むことができます。

県立図書館には2台の貴重な映写機があります。その映写機の歴史とエピソードが本書に書かれています。
1台は音楽・映像コーナーに展示されている、35ミリ映写機「フジセントラルF-6型」(昭和29年製)。35ミリ映写機とは、映写するフィルムの横幅が35ミリ幅の、かなり大きな映写機です。
昭和23年(1948年)、日本ビクターと富士精密工業は「フジセントラル」という35ミリ映写機を開発します。富士精密工業(旧中島飛行機製作所)は、戦前に飛行機を作っており、その技術を活かして映写機を製作しました。戦勝国であるアメリカの真似をしたら大変だと、ドイツの映写機を手本とし、これに独自の改良を加えて「フジセントラルF-1型」が誕生。娯楽の少ない戦後、アメリカ文明の匂いがする映画は人々を魅了し、フジセントラル映写機は「リュックに札束詰めて買付にくるほど、売れに売れた」のだそうです。

もう1台の貴重な映写機、「ナトコ」についても書かれています。「フジセントラル」開発と同じ昭和23年、GHQは日本の民主化政策のため「ナトコ」16ミリ映写機1300台を日本全国に無償供与しました。その内の1台が県立図書館に保管されています。
どちらの映写機も今は動きません。しかし、本書を開くと、人々を喜ばす映写機の様子が活き活きとよみがえってきます。

当館では動く16ミリ映写機も所蔵しており、映画会や、16ミリ映写機を操作するための資格を取得できる講習会を開催しています。興味がある方はぜひご参加ください。

『シネマ100年技術物語』 石弘敬編著 日本映画機械工業会 1995年
資料番号:21142252 請求番号:535.85/4 OPAC検索

(県立図書館:1年振りの紅葉坂)

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過去、当ブログで紹介したオススメ本と、本記事の紹介本を含む新規のオススメ本を、司書の図書紹介コメントとともに県立図書館本館1階閲覧室で展示しています。

【開催期間(予定)】
○第1期:6月9日(火曜日)から7月8日(水曜日)
(2010年から2014年のブログ記事から紹介)
○第2期:7月10日(金曜日)から9月9日(水曜日)
(2015年から2020年のブログ記事から紹介)