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本の表紙画像(『牛車(ぎっしゃ)で行こう! 』 京樂真帆子著)皆さんは牛車のことをどれくらいご存じですか。光源氏も乗りました。受領(ずりょう)として赴任するときも牛車で行きました。牛車は時に人に担がれ川も渡りました。本書では牛車という乗り物を通して平安貴族の生活や文化に迫って行きます。

国風文化がさかえた平安時代はかな文字の発明で多くの女流作家が誕生します。女性の感性を取り入れた文化とも言われており、文化が醸成されていく過程では女性の趣味や嗜好が反映されていると言われています。多くの物語に牛車にまつわる出来事が登場し、源氏物語の車争いなどが有名です。

牛車は最初高齢者に配慮するものでしたが時代とともに規則化され、階級や身分によって乗れる車種が決まっていました。また町に出た時のルールや渋滞時のマナーなども決められていました。それによるトラブルも発生しました。しかし全盛期は機能よりも貴族の権力や財力を誇示することが優先されます。何両も所有する貴族もおり時には相続の対象となり兄弟で争いました。

円融天皇の中宮藤原遵子が実家である藤原頼忠の屋敷から内裏へ戻る際、お供の女性に3両の糸毛車(いとげのくるま)とそれ以外に人気の高級車・檳榔毛車(びろうげのくるま)を20両も行列させたそうです。このように豪華な高級車両をたくさん調達できる力を都の人々に誇示する絶好の機会でした。誰と同乗しどこへ行くかなど政治テクニックにも利用されました。

こうして見ると乗り物以外の使われ方が興味深いです。在原業平は女車の簾からちらりと見えた姫君と恋に落ち、木曽義仲は牛車に乗る作法を知らず恥をかきました。清少納言は牛の顔の好みや高級車の檳榔毛車はゆっくり走るのがよいと枕草子に書いています。
牛車は生活を便利にするもの以上の役割でした。平安貴族は男性も女性も祭り見物や花見など想像以上に自由でおおらかで行動的でした。楽しく平安文化が学べる一冊です。

『牛車(ぎっしゃ)で行こう! 平安貴族と乗り物文化』 京樂真帆子著 吉川弘文館 2017年
資料番号:22953830 請求記号:682.1/292 OPAC検索

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