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本の表紙画像(『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』 アンドリュー・ロウラー著)「もしイヌ科とネコ科に属する動物が明日消滅してしまい、わずかばかりのインコとスナネズミも一緒に消え失せてしまったら、大勢の人々が嘆き悲しむことになるだろうが、世界経済や国際政治に及ぼす影響は最小限で済む。しかしながら、世界から突然ニワトリが消えたなら、即座に大惨事になるであろう。」p.9
「歴史上最も巧みに作り変えられた動物は、世界で最も頻繁に虐待されている動物でもあるのだ。」p.12

ニワトリの生き物としてのルーツ、家禽化の歴史から、ニワトリにまつわる文化(祭祀、闘鶏、時には呪術)、そして養鶏の現状とこれからを幅広く書いている本です。一冊すべてを読み終えるころにはちょっとしたニワトリ博士になれるでしょう。

小学校の飼育小屋のボス的存在で、「掃除当番が回ってきても鳥小屋には入りたくない」とやんちゃな男子たちに恐れられていたニワトリ。
手軽なお肉、料理や製菓、なんにでも使えて便利な卵。スーパーに並ぶおいしい食材。
身近にあり、よく知っている生き物だと思っていましたが、知らないことだらけでした。

・ ニワトリが世界に広がったのは人間が連れて行ったからであり、原産地はアジアである。
・ 原種であるセキショクヤケイは人に慣れないが、さまざまな環境、餌に適応する能力と、定住し群れで暮らすという人間が飼育しやすい性質を持っていた。現在では、ニワトリとの交雑によりほぼ絶滅している。
・ ニワトリは飼育するのに手がかからずコストが低いため養鶏は主に女性、奴隷の仕事だった。
・ 近代産業化のきっかけは第一次世界大戦での需要の増加、恐慌による経済の変化であり、養鶏が広がるにつれより効率的により多くの食肉、卵を得るため品種、飼育法が分かれていった。 など、ただ美味しいだけではなく、とてもディープなニワトリの世界を紹介してくれます。

著者によるとニワトリは私たちの生活にはなくてはならないもの、羽の生えたスイス・アーミーナイフ(万能ツール)であるとのこと。
コンビニのから揚げは、実はとてもすごい食べ物だったのだと感じることのできる一冊です。

『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』 アンドリュー・ロウラー著 インターシフト 2016年
資料番号:22915250 請求記号:646.1/106 OPAC検索

(県立図書館:たんどりー・ちきん・なんばん)

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過去、当ブログで紹介したオススメ本と、本記事の紹介本を含む新規のオススメ本を、司書の図書紹介コメントとともに県立図書館本館1階閲覧室で展示しています。

【開催期間(予定)】
○第1期:6月9日(火曜日)から7月8日(水曜日)
(2010年から2014年のブログ記事から紹介)
○第2期:7月10日(金曜日)から9月9日(水曜日)
(2015年から2020年のブログ記事から紹介)