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本の表紙画像(『約束の力』山﨑康晃著)横浜スタジアム、9回表、青く染まったスタンドに響き渡る「ヤ・ス・ア・キ」コール。横浜DeNAベイスターズ不動のクローザー、山﨑康晃選手がマウンドに上がるお馴染みのシーンは、野球ファンならずとも、目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。本書はベイスターズの、そして今や野球日本代表の絶対的守護神として期待される康晃選手が、これまでの人生で培ってきた経験を書き綴った1冊です。

内容を少し紹介します。康晃選手は、日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれました。東京の下町で育ち、草野球をやっていた父の影響で、気付けば野球が大好きになっていました。人生最初の大きな転機は、小学3年生のときの両親の離婚でした。康晃選手は姉とともに、母と生活する道を選びました。母は昼も夜も働き、康晃選手が野球を続けることを支えました。康晃選手が人生で一度だけ野球を辞めたいと思ったのは、帝京高校2年生のとき。当時は3番手の控え投手で人間関係や、野球と勉強の両立に悩み、母に「もう辞める!」と訴えました。母は涙を流しながら康晃選手を無理やりタクシーに乗せ、運転手に五千円札を渡し、学校で降ろすように頼みました。学校に着くと監督やチームメートが待っていてくれました。「僕には家族と野球しかない」。そう決意し、翌日母にお小遣いで買った一輪の花をプレゼントしました。

その後亜細亜大学に進学し、ドラフト1位でベイスターズに入団。2020年にプロ6年目を迎え、厳しい競争の世界の中、一軍で戦い続けています。「ファンサービスは、れっきとしたプレーの一つ」と、常に笑顔でファンと接する姿勢も人気です。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京オリンピックや、プロ野球が延期となってしまった今、神奈川のプロ野球チームから生まれたヒーローの思いが詰まった本書を読み返し、胸が熱くなりました。これからも、康晃選手はたくさんの人の夢を背負って、約束を果たしてくれると思います。

『約束の力』 山﨑康晃 著 飛鳥新社 2018年
資料番号:60742996 請求番号:K78.1 / 202 OPAC検索

(県立図書館:かぐやひめ)