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『プラネタリウムを作りました。』表紙画像『プラネタリウムを作りました。』改訂版 大平貴之著 エクスナレッジ 2010年 資料番号:81447476 請求記号:440.76/8 OPAC

子どものころ、初めて覚えた星座はオリオン座でした。それまでは星を漠然と「空に輝くもの」と思っていましたが、塾からの帰宅途中、冬の夜空に自分の目ではっきりと、その形を捉えたときの感激は、今でも鮮明に覚えています。

今からおよそ10年前、偶然出かけた商業施設にて移動式プラネタリウムが上映されることを知り、運良く鑑賞することができました。可搬式のエアドームに入ると中心部に小型の機械が設置されていて、それはMEGASTAR-ZERO YOKOHAMAという、著者である大平氏が開発した投影機でした。

大平氏は高校生時代に1号機,2号機を作製、大学生時代には4年かけて開発に成功した3号機となる「アストロライナー」、就職後に取組み小型軽量化した4号機「メガスター」など、年月をかけて改良を重ね、より高度な投影機を作製されました。勉強しながら、アルバイトをしながら、会社で仕事をしながらの作業でした。個人で作り出されたこれらすべては、自宅の自室である7畳間で開発されたそうです。大小さまざまな困難に直面し、時にはショッキングなできごとに遭遇することもありましたが、文面には悲壮感が無く、逆にその厳しい状況を楽しまれているかのような印象を受けました。

色々な技法に挑戦し、そこから得たヒントを基に作られた「メガスター」は、100万個もの星を投影することに成功しました。その当時の最上位機種で2万から3万個だったので、どれだけ凄いものが開発されたのか、おわかりいただけるのではないでしょうか。その後も改良が重ねられ、投影数は410万個に増え、現在では2200万個も投影できる機種もあるようです。

本書では投影機の仕組みや、実際に使われた部品、上映会の様子など、図や写真で紹介されているので、投影機作りの軌跡をたどってからプラネタリウムへ行くと、いつもとは違った楽しみ方ができるかもしれません。

(県立川崎図書館:見上げてごらん夜の星を)