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『日本の洋食』 青木ゆり子著 ミネルヴァ書房 2018年 資料番号 23014152 請求記号 383.81 160 OPAC(所蔵検索)

日本の料理の中には、カレーライスや豚カツ等海外から日本に入ってきて、土地の風土や日本人の味覚に合うよう変化をした料理が少なくありません。本書では、洋食だけでなくラーメン等海外にルーツを持つ日本の料理を紹介しています。日本が外国の料理をいつごろ、どのように受け入れたか、海外と日本の交流の歴史も知ることができます。



「牛鍋」はすき焼きの原型になったと言われている料理ですが、幕末から明治時代にかけて外国人居留地のある横浜で生まれました。それまで日本人は、牛肉を食べる習慣がなかったのですが、「欧米人より劣っていた体格を改善するため、食生活では肉食が奨励されました」ということもあり、牛鍋を食べることが流行しました。明治の文豪森?外も「牛鍋」という作品を書いていて、本書で紹介されています。また、牛鍋とすき焼きの違いについても説明があり、牛鍋は牛肉と野菜等を割り下や味噌で煮たもの、すき焼きは、最初に牛肉を焼いてから割り下で煮るものということです。 洋食の代表的な料理として、カレーや肉じゃが、コロッケ等があります。その中でも、カレーが日本に入ってきたルートは意外でした。インドから直接日本に入ってきたと思っていましたが、イギリスから入ってきていたのです。イギリスのカレーは明治時代にインドの香辛料を使って、シチュー料理として発明されたものです。現在では、シチューではご飯は食べられないという人もいますが、カレーがシチューの一種だったとすると、シチューでご飯を食べる人がいるのもわかります。日本帝国海軍は1870年に兵式をイギリス式とすることが決定され、食事にもイギリス式を採用し、カレーが登場するようになります。当初は、日本海軍でもイギリス海軍にならって、カレーをパンにつけて食べていました。しかし、日本人にはなじみにくかったため、ルーにより多く小麦粉を加えてとろみをつけ、ご飯にかけて食べるようになると、海軍の軍隊食「ライスカレー(カレーライス)」として定着しました。そして、故郷に帰った兵士が家庭に伝えたのです。カレーは屋外で行動する軍隊の食事だったので、キャンプ等の野外活動と親和性が高いのも納得ができます。 日本料理は、他国の料理が入ってきた時に自分の好みに近づけて受け入れる料理だと思いました。外国由来の日本料理を食べるときには、日本に受け入れられるときにどんな背景があるか知っておくと、より味わい深くなります。この本では日本各地で発展した食べ物を紹介しているので、読んでから各地を訪れて各地の料理を食べるのもよいと思います。

(県立図書館職員:神戸でパンが食べたい)