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『図説・世界の蓄音機』 三浦玄樹著 マック杉崎監修 三玄社 1996年 資料番号:20864005 請求記号:547.33/8 OPAC(所蔵検索)

1877年12月、発明王トーマス・アルバ・エジソンは、声や音楽を録音し再生する人類初の機械を完成させました。蓄音機の誕生です。

本書は世界の蓄音機の最初期モデルから、蓄音機完成期(1930年代)の名器までを、400点を超える図版と詳細な説明で記した、蓄音機の本格的研究書です。 約20年間をかけて数百台にのぼる蓄音機を検証し、製造会社別に解説しています。名器ばかりではなく実験的な機械や珍品もあり、さまざまな蓄音機を見ることができます。



エジソンが最初に発明したのは、錫(スズ)箔を巻き付けた円筒に、音の振動を刻んで録音する「錫箔蓄音機」でした。エジソンは特許を申請し、会社を設立しました。しかし、初めこそ人々を驚かせ興味を惹いた錫箔蓄音機は、思うように売れなかったそうです。エジソンの興味は白熱電灯の研究に移り、その後約10年間、蓄音機から離れることになります。 実はエジソンが蓄音機を発明する8ヵ月前、フランスの詩人にして科学者のシャルル・クロは、フランス科学アカデミーに、ある論文を提出していました。録音再生の理論的部分は、ほとんどエジソンと同じ装置の論文だったそうです。しかし、シャルル・クロは実際に実験をするには至りませんでした。本書にはこういった「エジソン蓄音機の誕生秘話」等も解説されており、大変興味深く読むことができます。

日本に蓄音機が伝わったのはいつだったのでしょう。日本に最初に蓄音機を紹介したのは、東京大学のイギリス人教授ジェームズ・アルフレッド・ユーイングでした。1879年(明治12年)3月に、東京商工会議所で錫箔蓄音機の公開実験を行なっています。エジソンが蓄音機を発明したのが1877年ですから、驚くべき早さで日本に伝わっているのです。

エジソンが蓄音機を離れた10年の間に、他の技術者達が研究を行い、錫箔蓄音機より遙かに性能の優れた蓄音機が開発されました。それに触発されたエジソンは、蓄音機の開発を再開します。エジソン社は次々と新しい蓄音機を世に送り出していきます。 後に、日本でも有名なコロンビア社やビクター社等も、レコードと蓄音機の販売に加わります。レコードは円筒型から円盤型になり、機械式蓄音機から電気式蓄音機へと、より良い音を求めて改良されていき、現代のオーディオへと繋がっていくのです。 先人達の偉大な発明と努力に感謝しつつ、今日も音楽鑑賞を楽しむことにしましょう。 (県立図書館職員:音楽・映像コーナーの蓄音機は今も動きます)