『サクラの文化誌』 岩﨑文雄著 北隆館 2018.10 資料番号:23036015 請求記号: 479.75 15 OPAC(所蔵検索)
各地から桜開花の便りが届くようになりました。これから日ごとに花開いていき、やがて満開を迎える桜は言葉にできないほどの美しさです。その美しさに魅了され、私は毎年お花見に出かけています。桜の下に大勢の老若男女の花見客が集まる光景は、日本の風物詩となっています。 本書は人々の心を捉えてやまないこの「サクラ」と日本人の関わりについて、古代から平成の現代までを年代ごとに歴史文化・自然科学の両面から詳述しています。
著者は桜研究の第一人者で、「染井吉野の江戸・染井発生説」を提唱した農学博士です。 お花見の歴史はもちろん、サクラが出てくる歌や絵画、工芸品、民話、桜餅・サクラの花漬けの作り方など、本書にはサクラに関するあらゆることが書かれています。ちなみに、このサクラの花漬けに湯を注いだ桜茶は江戸時代にはすでにあり、現在では結納や結婚式などおめでたい席でよく飲まれています。湯を注いだときに閉じていた花びらが1片1片ゆるやかにほぐれるように、目でも賞味する桜茶。花を摘む時期が早かったり遅かったりすると、湯の中で花が開かないとのこと。実に雅な飲み物です。 昔話の部分では、「花咲爺」の花はサクラなのか、サクラならば品種は何か?と推考しています。著者のサクラに関する並ならぬ探求心に感心させられます。そして、日常のさまざまなところに登場するサクラの多いことに驚き、私たち日本人にとってサクラは特別な花になっていることを実感します。 さらに本書には、植物としてのサクラの分類や育て方、病気、サクラにつく害虫と対処法もわかりやすく書かれているので、サクラを育てている人には園芸書としてもおすすめです。 先日、来年の東京オリンピックの聖火リレートーチのデザインの発表がありました。そのデザインは桜がモチーフとなっていました。古来より日本人が特別な関わりをもって親しんできている花、サクラ。人々を惹きつけるこの花の魅力がわかる1冊です。
(県立図書館:チェリーブロッサム)