平成30年9月29日(土曜日)、本館1階で開催されている企画展「マリア・ルス号事件~明治という時代と日本人の正義感~」に関連する講座として、「マリア・ルス号事件の再考」を開催しました。講師には、中部大学人文学部歴史地理学科教授 森田朋子(モリタ トモコ)氏をお招きしました。
講座では、まず、マリア・ルス号事件の話をする前提として、「黒人奴隷の廃止と苦力貿易」について、説明がありました。苦力(クーリー)はインド・アジアからの単純労働者でしたが、移民や出稼ぎが多く、低賃金で長期契約という部分が黒人奴隷とは異なりました。「黒人奴隷の廃止」は、一見、マリア・ルス号事件とは無関係に思えましたが、黒人奴隷の廃止により、黒人奴隷に代わるものとして苦力が使われることになったということが、マリア・ルス号事件の背景としてあるということがわかりました。
次に、マリア・ルス号事件がどのようなものであったか、また、どのように裁判が行われていったのかについて、年表と判決文を見ながら、詳しい説明がありました。事件が起きた当時、アメリカ公使のデ・ロングとイギリス公使のパークスが岩倉使節団の接待のために自国に帰り、両国とも代理公使がこの事件の対応をしたことでこの事件の流れが変わったということがとても興味深く感じました。 最後の質疑応答では、用意した時間いっぱいまで質疑が続き、参加者の熱心な様子がうかがえました。
講座の会場内では、「マリア・ルス号事件」「大江卓」「副島種臣」に関する資料や講師の森田先生の著作を展示しました。主な資料は、本館1階の企画展に展示されているため、それほど多くの資料を展示することはできませんでしたが、実際に手に取ってみることができるとあって、講座終了後に、それらを熱心にご覧になっている参加者もいました。
(県立図書館 地域情報課:講座担当)
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