三、歌と観光―江ノ島・鎌倉・横須賀
東海道の発展により、海沿いの地は多くの旅人が訪れ、和歌を詠み、広く紹介されていました。とくに鎌倉は今も昔も観光地として名高く、神社仏閣から川、山、崎とあらゆる地名が和歌とともに読み継がれてきました。
鎌倉市雪ノ下。言わずと知れた鶴岡八幡宮は、和歌の世界でも古くから読み継がれてきました。歌人としても知られる三代将軍源実朝暗殺の際に甥の公暁(くぎょう)が隠れていたとされる石段途中の大銀杏は落雷に遭うまで人々に親しまれていました。
鶴の岡あふぎて見ればみねの松
梢(こずゑ)はるかに雪ぞつもれる
(金槐和歌集313源実朝)
【意味】
鶴岡八幡宮を振り仰いでみると、はるか彼方の峰の、松の梢にまで雪が積もっている。これでは鶴と白雪の見分けがつきはしない。
水色の鎌倉山の秋かぜに
銀杏ちりしく石のきざはし
(佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』より
与謝野寛)
中世の紀行文『北国紀行』(法印尭恵(ぎょうえ))の歌は、「雪ノ下」を巧みに詠みこんだ惜春の歌です。
春深き跡哀れなる苔の上の花に残れる雪の下道
【意味】
春も深くなったこの証跡は趣のあることだ。苔の 上に散った花吹雪の残る雪の下の道よ。
鶴岡八幡宮 2016年10月12日 撮影
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