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展示の様子。左手壁面に年表、右手壁面にパネル、ショーケースが並んでいる様子。2020年は、山川菊栄生誕130周年にあたります。山川菊栄(1890-1980)は大正期、科学的立場から婦人解放論を展開し、婦人運動の理論的指導者として後進に強い影響を与えました。戦後発足した労働省の初代婦人少年局長として婦人の地位向上をはかり、年少労働者を保護し、労働婦人の権利を確立することに尽力しました。退職後も女性問題に関する多くの著作を出版、評論活動を続け、これらの著作活動を通じて婦人運動を指導しました。日本のフェミニズムや婦人労働を語る上で欠かすことのできない存在です。
また、大佛次郎賞を受賞した『覚書 幕末の水戸藩』やベストセラーにもなった『婦人論』(ベーベル著)の翻訳など婦人運動に留まらない多彩な活躍をみせています。
神奈川とはゆかりが深く、鎌倉の稲村ガ崎や藤沢の村岡に長年住み、県立かながわ女性センター(旧婦人総合センター)図書館の女性労働資料の充実に尽力しました。

かながわ女性センターでは、山川菊栄の没後、長男の山川振作(元東大教授)・美代夫妻より寄贈された蔵書をもとに、1988年11月に「山川菊栄文庫」を開設しました。「山川菊栄文庫」は2015年2月、かながわ女性センターの藤沢合同庁舎への移転に伴い、多くの女性関連資料とともに当館に移管されました。

展示室の様子。壁面にパネル、展示ケース内に資料が飾られている。本展では、山川菊栄の業績や活動の足跡をパネルでたどっていきます。同時に山川菊栄の生きた時代がうかがえる当時の世相もパネルでご紹介します。また、時代をうつす大年表(主な出来事、山川菊栄のあゆみ、当時のベストセラー 当時流行したもの)も掲示してありますのでその時代を楽しんでいただけたらと思います。

壁面には、当時の新聞記事より、山川菊栄のインタビュー記事も掲示しています。
展示ケースでは、コレクション「山川菊栄文庫」から貴重な資料とあわせて、ベストセラー文庫、雑誌の創刊号コレクションなど当館の多彩な資料を展示しています。
その一部をご紹介すると...
1948年9月に『美しい暮しの手帖』(後に『暮らしの手帖』に名前を変えました)が、創刊されました。広告のない雑誌、そして広告がない故に徹底的に行える商品テストという新しいタイプの婦人雑誌です。この『美しい暮しの手帖』の編集者が花森安治です。花森が高校入試(1929年)に失敗し、大倉山の市立図書館(現・神戸市立中央図書館)に通って受験勉強のかたわら、読んだのが、山川菊栄訳のベーベルの『婦人論』(アルス)でした。(『花森安治伝』 津野海太郎著 新潮社 請求記号289.1/5900 OPAC検索 より)
2冊とも展示ケースで御紹介しています。

この企画展示は、県立図書館本館1階展示コーナーで3月23日まで開催しています!

最後になりましたが、今回の企画展示に関しまして、山川菊栄の足跡を辿った展示パネルの借用など、山川菊栄記念会に多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

○企画展示「山川菊栄とその時代」
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(県立図書館:企画展示担当)