公開

講演中の様子.JPG2020年 (令和2年)は、「日本書紀」が完成したとされる元正天皇の720年 (養老4年)から数えて1300年目でした。 そこで、2020年12月20日(日曜日)に、県教育委員会の主催で、講演会「日本書紀と神奈川」を開催しました。講師は、県立歴史博物館の望月一樹学芸部長です。

前半は、「『日本書紀』とは」から始まり、書名や構成、史料性、ヤマトタケルの東征についてのお話でした。 日本書紀は日本で最初に作られた国史で、全30巻から成ります。大王(天皇)を中心とした中央集権国家の確立に伴いその歴史的正当性の必要から、681年に天武天皇の命により編纂が始まったと考えられているそうです。ヤマトタケルの東征についても、『日本書記』と『古事記』それぞれに書かれている内容が、わかりやすく解説されました。父である景行天皇の命により東国平定に派遣されたヤマトタケルの通った「古東海道」は、現在の東海道と違って、鎌倉から走水へ行き海上を渡り上総へ至るといったルートでした。

後半は、「武蔵国造の乱」と「仏教文化の伝来」についてでした。 武蔵国造をめぐる争いの様子や、武蔵国内の呼び名の説明などがありました。仏教文化の伝来では、県内の古代寺院の説明もありました。7世紀創建にさかのぼる寺院は、瓦当文様からその創建年代が推定できるそうです。小田原市、横須賀市、川崎市の3寺院が紹介されました。

最後に、『日本書紀』に記されるところの、7世紀以前の神奈川を解き明かす資料は極めてわずかであり、かつ断片的なものである。しかしながら、考古学による発掘調査の成果を『日本書紀』の記事などと結び付けることで、いままでに知られていなかった新たな神奈川の歴史を明らかにすることも可能であろう。今後は文献史学の枠だけでなく、考古学や美術史学も含めた学際的な研究がさらに深まることに期待したいと思う、と締めくくられました。

この講演会などを機に、古代の歴史や神奈川の郷土史などに関する興味・関心につながれば幸いです。 なお、県立図書館本館1階のトッピクス展示コーナーにおいて、2021年1月13日まで、講演会に関連した図書や資料を展示・配架していますので、ぜひご覧ください。

(県立図書館:「日本書紀と神奈川」担当)