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本の表紙画像(『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』太田記念美術館編)四大奇書、というものをご存知でしょうか。この場合の「奇書」とは、「奇妙な本」の意味ではなく(この意味での奇書に興味がおありの場合は『奇書の世界史』などは如何でしょうか)、「世に稀なほど卓越した書物」という意味で、『三国志』、『水滸伝』、『西遊記』、『金瓶梅(後に紅楼夢に代わります)』の四冊が挙げられます。
ゲームやマンガで親しまれている三国志や、何度もドラマになった西遊記と違い、日本では水滸伝、紅楼夢はあまりメジャーでないように思われますが、とくに水滸伝は江戸時代、大変に人気があり、『傾城水滸伝』のようなパロディが書かれるなど親しまれていたようです。現代においても、キューバ革命のエッセンスを取り入れ現代的になった北方謙三版水滸伝等々、数多くの関連作品があります。

水滸伝のおおまかなあらすじとして「梁山泊という湖のほとりに、108人の豪傑が集合して大暴れする」というものはよく知られています。108人(男105人、女3人)の中には、当然目立つ人もいれば、何をしているのかよくわからない地味な人など、さまざまな人がいます。これら個性にあふれたキャラクターが水滸伝の大きな魅力であることは疑いえないでしょう。たとえば江戸時代、水滸伝は人気があったということはすでに述べましたが、とくに「九紋竜史進」は「竜の入れ墨、乱暴だが竹を割ったような性格」という点が江戸っ子風である、として人気だったそうです。

今回ご紹介する『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』は、2016年に太田記念美術館で開催された展覧会の図録です。歌川国芳の精妙な筆致で、劇中の活躍シーンを再現した浮世絵などが収録されています。単純に「絵のすばらしさ」の鑑賞としても、一貫したテーマで作品が見られてわかりよいですし、108人の好漢の活躍を知ったうえで読むと、「これはあのシーン!」というような楽しみがあります。
四大奇書の、手が伸びづらいポイントとして「長い」というのがあるとは思いますが、前述の北方版(『水滸伝』 北方謙三著 集英社 2000年 OPAC検索)や、べらんめえ口調の吉川版(『新・水滸傳』 吉川英治著 講談社 1960年 OPAC検索)などは比較的読みやすいと思います。じっくりと時間をかけて楽しんでみるのもご一興かと存じます。

『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』 太田記念美術館編 太田記念美術館 2016年
資料番号:22912364 請求記号:721.8/512 OPAC検索

(県立図書館:北方版の樊瑞が好き)

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【開催期間(予定)】
○第1期:6月9日(火曜日)から7月8日(水曜日)
(2010年から2014年のブログ記事から紹介)
○第2期:7月10日(金曜日)から9月9日(水曜日)
(2015年から2020年のブログ記事から紹介)