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本の表紙『最高の工事写真の撮り方』 中野裕著 エクスナレッジ 2018年 資料番号:81708588 請求記号:525.5/69 OPAC

工事写真というと町中で作業着を着た方が日時や工事内容を書いた黒板とともにさまざまな箇所を写している様子が頭に浮かびます。デジカメの普及で枚数も気軽に沢山撮れ、すぐに写りも確認できるのでカメラ屋さん等で現像が必要だった昔よりもだいぶ便利になっているのではないでしょうか。

以前、チラシ広告の商品写真を撮る会社で働いていたことがあります。ペットボトルを撮るときはライトを2方向から当てる、袋菓子の商品は中身を出して袋をつぶす、カップ麺のフタは開封しフタをピンと張り再度閉じる。鍋のおいしそうな写真にはドライアイスの湯気、刺身はだらっとしないように切り身1枚1枚の間に板状の紙等を挟む、贈答用の素麺の束は撮影中に湿気で反ってこないように糊を塗る...。さまざまな小技が駆使されていて、綺麗に写真を撮るための苦労に驚いたものです。

この本にある工事写真も綺麗にという点は同じですが、美味しそうにではなく、工事の精度、内容を記録に残し第三者に伝えるためのものであり、正しい手順で正確な作業が行われているかをいかに分かりやすくするかというのが一番の目的です。それにより現場の安全性等を証明できます。

そのためのベストアングルの採りかたであるとか、黒板や添え尺の効果的な使用方法、天候、朝日、夕日、蛍光灯等、光によってホワイトバランス調整の必要性(日中の太陽光は白色無色だそうです)、フラッシュやデジカメ機能の使い方等が多くの写真や図で書かれていて、あまり知識のない私でも理解しやすく、普段の生活での写真撮影にも役立ちそうでした。

また、公共工事における工事帳票の作り方、納品の仕方、形式、写真の保存や管理の仕方といったことも書かれていたり、新しいテクノロジー、クラウドやドローンを使うことで労働力不足に対応したり、危険を回避できる撮影方法などにも触れていました。

わかりやすい記録を残すための「最高の工事写真の撮り方」。良い記録を残すことで、後の人たちに熟練した職人さんの技術を伝えるための役割も持っているそうです。そのおかげでまた良い職人さんたちが育って、更に優れた素晴らしい建築物が産まれていく。現在の、またこれからの私たちの生活の改善につながっているのかもしれません。

写真の撮り方の本というと、人物だったり、風景の撮り方といったものしか見たことがなかったので、ヘルメットや作業服、土砂や鉄骨といったちょっと特殊なものばかりの写真にびっくりしましたが、あらためて写真の素晴らしさを別角度から再認識できた本でした。

(県立川崎図書館:はい!チーズ!)