『北欧旅行記』 メアリ・ウルストンクラフト著 堀出稔訳 金星堂 2018年 資料番号: 23043177 請求記号:293.89/109 OPAC(所蔵検索)
新館1階にある女性関連資料室の新刊コーナーでこの本を見つけた時には、懐かしい名前に胸が高鳴りました。学生時代にフェミニズムについての講義を受講したときに、メアリ・ウルストンクラフトを知りました。
まず、本を開くと厳めしい顔つきの著者の肖像画が目に飛び込んできます。この旅行記は、ウルストンクラフトが彼女の代表作である『女性の権利の擁護』執筆後、スウェーデン、ノルウェー、デンマークへ旅した時の旅行体験をもとにしたものです。手紙形式で書かれていて、25通の手紙は当時の恋人のギルバート・イムレイ宛てに書かれたものだそうです。その内容は、旅行記という名のとおりに旅の記録を描くことに終始しているばかりではありません。そこには彼女の思想が強く反映されて、彼女の人間観、自然観、世界観が強く打ち出されています。
ウルストンクラフトの一生は、38年という短い生涯でした。イギリスの18世紀後半から19世紀初頭の男性優位社会にあって、人間としての自立する女性像を確立し、フランス革命思想に影響を受けて人間の権利に目覚め、さらに女性の権利を体系的に著し、世界のフェミニズム思想の先駆者となったのです。その最晩年の作品がこの『北欧旅行記』です。
どうかこの本を読んで、200年以上も前にしっかりとした自分の意見を持った女性がいたことを知っていただけたらと思います。 また、この本には、「ウルストンクラフトの北欧旅行の行程とその周辺地」の地図がありますので、読みながら辿ってみるのも面白いです。
参考までに、同じ著者で石幡直樹訳『ウルストンクラフトの北欧からの手紙』は本館の公開の棚に並んでいます。彼女の暖かみのある顔が印象的です。
(県立図書館:マーガレット)