『ぼくが宇宙人をさがす理由』 鳴沢真也著 旬報社 2012年出版 資料番号:81563918 請求記号:440 OPAC
皆さん、宇宙人は「いる!」と思いますか、「いない!」と思いますか? 私は幼い頃から宇宙人を特集したテレビ番組があれば、いつもワクワクしながら見ていました。「宇宙人」と聞くと、円盤型のUFO(未確認飛行物体)に乗り、黒い大きな目、髪のないツルっとした丸い頭、長い手、銀色の奇妙な外見の生命体を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。この本ではSETI(地球外知的生命体探査 Search for Extra-Terrestrial Intelligence )と呼ばれる、地球外生命体(知性を持つ生命体)による宇宙文明を発見するプロジェクトに挑む、著者の半生を綴っています。 長野県の小さな町に生まれた著者は、幼少期に読んだ天文学の本やアポロ計画の影響で、いつか宇宙に関わる仕事がしたいと思うようになりました。日に日に宇宙への思いが募る中、中学生の時に部活動中に骨折をしたことがきっかけで、彼の未来は思わぬ方向へと向かいます。彼は足が治るまで学校に行けず、治った頃には勉強についていけず、やがて不登校になりました。長いひきこもりの末に、通信制の高校をどうにか卒業しましたが、学力が足りずに大学入学試験は不合格。圧し掛かる、理想と現実の乖離と焦燥感にもがき苦しむ著者。心が壊れそうなほど懊悩し、それでも彼は夢を捨てることができず、歯を食いしばりながら猛勉強をした結果、天文学を学べる第一志望の大学に22歳で入学することができました。かつての同級生は大学卒業を迎え、社会に羽ばたく頃でした。その後著者は大学院進学、教師を経て念願の天文学者としての人生を出発させます。 彼のように、挫折から這い上がって夢を叶える人は、ほんの一握りかもしれません。努力だけでどうにかできるほど、世の中は甘くない事を誰もが知っています。だからこそ、人より少し遠回りな人生を歩んだ著者がSETIプロジェクトにおいて、世界の研究者をまとめるリーダーとして生き生きと活躍している姿は、私達に勇気や希望を与えてくれます。また、あきらめないことの大切さを教えてくれます。 残念ながら、まだ地球外知的生命体の存在とその文明をはっきりと示す観測データはありません。もし地球で暮らす私達と同じような知性を持つ生命体がどこかに存在するならば、私の好奇心は否応なく膨らむことでしょう。しかし、広い宇宙のどこにもいないならば、それは私達地球人がこの宇宙において特別な存在だという証になるため、私はあらためて生まれてきた奇跡に感謝するでしょう。
(県立川崎図書館資料整備課:地球内知的生命体)
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