平成30年5月19日(土曜日)、神奈川探訪講座「かながわと温泉~箱根を中心に」を開催しました。
講師には、神奈川県温泉地学研究所の主任研究員 萬年一剛(マンネン カズタカ)氏をお招きしました。萬年氏は昨年の4月と5月にNHKの番組「ブラタモリ」に出演して、タモリさんを箱根に案内しています。
講座では、まず温泉地学研究所について紹介されました。同研究所は、高度経済成長期に箱根や湯河原を訪れる人が急増したため、温泉の乱開発を防ぐ目的で1961年に設立されました。このような研究所は、全国でも類を見ないということです。ちなみに、所内に温泉風呂がある、と勘違いされることがあるそうですが、実際には温泉は持っていないそうです。現在同研究所では、地震や火山の研究が盛んに行われています。
次に、温泉の定義についてお話しされました。温泉というと、地下から湧く効能のあるお湯、という印象ですが、温泉法の条件は「成分または温度(25℃以上)」であり、条件を満たせば水やガスも含まれるそうです。一方、環境省が定める鉱泉分析法指針で療養泉に該当しないものは、効能がないため、「温泉法上の温泉」と呼ばれています。なお医学的には温泉は、昔の湯治のように2~3週間入り続けないと効果がないそうです。
次に県内の温泉について話されました。神奈川県の温泉は火山性のもの、横浜市港北区にある綱島温泉のような大昔の植物によるものなどがありますが、近年は深さ1000m以上の大深度温泉が増えました。しかし大深度温泉の湯は、塩分や鉄分を含むため、それらが設備を痛めてしまい、最近では頭打ちになっているそうです。
最後に箱根の温泉について述べられました。箱根の温泉の特色は泉質が多様、ということです。それは箱根火山の長い歴史が生んだ、複雑な地形によるものだそうです。タモリさんは硫黄泉が好みだそうですが、人によって適する泉質は異なるため、自分の体に合った温泉を見つけて入るのが良い、とのことでした。
会場内には萬年氏の研究報告が掲載されている『神奈川県温泉地学研究所 観測だより』や『自然科学のとびら』(神奈川県立生命の星・地球博物館発行)(OPAC検索)などを展示しました。講座終了後、それらを熱心にご覧になっている参加者もいました。
質疑応答の時間には「ブラタモリ」の裏話や、講師がこの業界に入ったきっかけなど、幅広い分野のやり取りが、時間一杯まで行われていました。
(県立図書館 地域情報課:講座担当)
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