新緑が眩しい5月、毎年恒例のツアーを開催しました。 普段は入ることが出来ない書庫や、裏側を巡りながら、ちょっと珍しいお宝本を紹介するツアーです。
1時間半かけて館内を巡る間、さまざまな質問が飛び交う大変賑やかなツアーとなりました。その場では回答が難しかった質問や、アンケートにあった質問について、追加報告いたします。
質問1:閲覧室に鞄の持込みが出来なくなったのはいつからですか?
「神奈川県立図書館・音楽堂20年史」(OPAC検索)を確認したところ、下記の記述がありました。
「施設としては一般読書室、青少年室、特別研究室、新聞雑誌室等を持つ、館内の閲覧業務は、昭和29年11月10日から開始された。(中略)当時わが国の図書館界では画期的なものとして全国の図書館から注目された、書架から自由に図書を選択できる完全な自由接架式の公開書架システムを採用した。(中略)しかし、このような利用者にとっては非常に便利な自由開架システムも、予想以上の紛失図書を生じさせた。そこで、昭和31年4月より、利用者が筆記用具など必要なもの以外、たとえばコートやカバン等は閲覧室に持ち込まないように、受付とロッカーを設置し、図書の外観上の手当として、天地印、小口印の押印等の処置をとった。また、11月からは図書の館外貸出も開始され、図書の紛失は漸減しはじめた。」
開館して2年経たないうちに、ロッカー形式に変わっていました。現在では当たり前になった公開書架ですが、当時は画期的だったという事も新鮮な驚きでした。
質問2:隣の音楽堂は改修工事をしているのに、図書館は工事をしないのですか?
1954年、県立図書館と同時に建てられた音楽堂は、2018年4月~2019年5月まで改修工事を行っています。「2011年3月11日の震災後に調査を行った際、耐震工事等の必要はないと診断されました。」と、その場で回答しました。が、2009年度に耐震診断を行っており、その結果、小規模な補強が必要とされていました。誤った情報をお伝えしてしまい、申し訳ありませんでした。県立図書館も、今後の再整備計画にあわせて改修工事を検討してまいります。
質問3:県立図書館用に設計された椅子は、開館当初何脚あったのですか?
閲覧カウンター前に設置されている椅子は、「図書館の椅子」と呼ばれ、前川國男建築設計事務所の家具デザイナー、水之江忠臣氏が手掛けたものです。現在ある9脚の椅子は後年新たに購入したもので、開館当時の椅子は残念ながら残っていません。
開館当時、実際に納品された数は確認できなかったのですが、「神奈川県立図書館 前川國男建築設計事務所図集」(OPAC検索)にある設計図には250脚と記載されています。当時の利用案内に座席数が260とあり、掲載写真からもこの椅子を使用している様子が確認できる事から、約250脚と考えられます。
質問4:図書館の業務や図書館の選書について知りたい。(アンケートより)
講座「本が棚に並ぶまで」では、資料の選定や受入・整理の仕事をご紹介し、作業の様子もご覧いただいています。(注意:今年度は5月30日に終了しています)資料の修理、保存に関する講座「本を保存するために」を、来年の1月頃に開催する予定です。こちらも図書館業務の一端がご覧いただけます。案内は随時HP、チラシ等で告知いたします。
参加された皆様からの質問をきっかけに、普段図書館で働いている時には気付かないような事柄を知ることが出来ました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。 今年の秋には、建築に特化したツアーを開催する予定です。 こちらも御参加をお待ちしています。
◯リンク先
・県立図書館の建築:「神奈川県立図書館本館写真集」
・ツアーでご紹介した装丁本:「神奈川県立図書館紀要 第13号」収録「神奈川県立図書館の特徴的な装丁の資料」
・貴重本について:当館職員が執筆・編集した「江戸を読む」
・絵図について :「神奈川デジタルアーカイブ」
(県立図書館:ツアー担当)
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図書館できごとファイル