わたしは、昨年まで高等学校の図書室で働いていました。高校生に聞くと、図書館というと「本を読むところ」「勉強するところ」というイメージがいまだに強く、「のんびりするところ」「遊びにいくところ」というようなイメージはなかなか出てきません。中には、「本を読まないなら図書館にいてはいけない」と信じている生徒さんもいたりして、学生だったころから日常生活の中に「なんとなく図書館に行く」ことが溶け込んでいた私としては、かなり驚かされました。
果たして、本当に図書館は「本を読まないといけない」ところでしょうか。実は図書館には、「読まなくても楽しめる本」もいっぱいあります。それは、ちょっとカタイイメージがあるかもしれない県立図書館でも同じです。
たとえば、法律や教育に関する主題が集められている書架の間を歩いていると、『にっぽん妖怪地図』(阿部正路、千葉幹夫編, 角川書店, 1996)なんていうのに行き当たったりします。大きな本で、手触りのいい和紙で表紙ができていて、めくってみるとたくさんの妖怪の迫力ある絵が載っています。
機械や建築ばかりが並ぶ棚をしばらく歩いていると、『シューズ A-Z』(ジョナサン・ウォルフォード, ガイアブックス, 2011)のように、とてもカラフルな本に行き当たったりして、思わず手に取ります。 綿を入れてふっくらさせた分厚い表紙を開いてみると、おしゃれなセンスのいい靴がたくさん載っていてため息がでるほど。さらに見ていくと、知らない芸術家の全集ばっかり並んでいると思っていた芸術の棚には『新海誠展』(朝日新聞社編, 朝日新聞社, 2017)。
農業や商業なんて自分は門外漢だと思っていた棚からは、『日本の美しい庭園図鑑』(大野暁彦、鈴木弘樹, エクスナレッジ, 2017)。難しい本しかないと思っていた棚から突如見つかる、「目に楽しい本」は、見つけただけでなんだか宝物を発見したような気持になるものです。
「本を読みにいく」のもいいですが、たまには「ちょっとなにか観に行く」くらいの気持ちで「なんとなく」図書館を訪れてみませんか?
(神奈川県立図書館 :C)