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『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』 表紙『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』 向山淳子著 向山貴彦著 たかしまてつを絵 幻冬舎 2001年 資料番号:21970264 請求記号:835/171 OPAC

この表紙に見覚えのある方も多いのではないでしょうか。この本は、表紙に描かれた「ネコ」とパイ屋さんの「エド」と一緒に、英語で書かれた物語を読めるようになるための案内書です。 本書には、「練習編」「実践編」があり、それらを通して、英語の物語を読む楽しさを案内しています。「練習編」では、単純な構造の英文から順に、一つ一つの例文ごとに英語の仕組みを解説しています。例文には、解説とともに「エド」と「ネコ」がイラスト付きで登場します。パイのお店を経営している「エド」と、「エド」が焼いたパイが大好物で度々勝手に食べてしまい、"ビッグ・ファット・キャット"になった「ネコ」とのやりとりが描かれています。彼らの物語にあわせて解説は進んでゆきます。彼らのやりとりに惹かれてページを進めるうちに、基本的な英文のパターンは読み終えています。「練習編」に続く「実践編」には、解説のない長文の物語が用意されています。それまでの基本的な英文のパターンがわかっていれば、読み進められるレベルで書かれています。途中で意味を考えるために目を止めることなく、物語の流れを味わえるように、意味が分かりにくい箇所には日本語訳がふられています。 著者は解説の中で、言葉の順序と読み飛ばすという手段について述べています。日本語と英語では言葉を並べる順序、語順が異なります。日本語では「誰が」「何を」「どうした」という順序の文ですが、英語では「誰が」「どうした」「何を」という順序の文になることを「ネコ」のイラストで図示しています。日本語は日本語の、英語は英語の語順に従って、頭に浮かんだ物や状況を書いているため、読んだときに物語にも違いがあると述べています。その差異が僅かであっても、物語を味わうためには、見過ごせない点であると思われます。 読み飛ばすという手段については、物語の流れを崩さず、内容をつかむことができる読み方として挙げられています。知らない単語があっても、辞書を引かずに読み飛ばすことで、意識が話から離れず、全体像を把握しやすくなるということです。日本語の文でも、読めない漢字があるときは読み飛ばして、前後の文章から状況を推察し、想像しながら読み進めていくことがありませんか。そうして最後まで読み終わるとその物語の全体像はつかめているはずです。一字一句をいかに読解するかではなく、全体としての物語を味わうためにはどうすればいいかについて、著者は案内しています。 全体を通して、英語の最適な読み方を提案しているわけではなく、一つの方法として著者の読み方を伝えている本です。もしも、著者の方法が合うのなら、「ネコ」と「エド」を追いかけて、日本語とは違う景色を描いてみるのはいかがでしょうか。


(県立図書館:やみつきキャット)